REIT版の自社株買いって何ですか? インベスコ・オフィス・J-REIT

(上記画像はインベスコがロゴに使ってもいるヒマラヤのアマダプラム)

保有している「インベスコ。・オフィス・ジェイレイト・投資法人(3298)」でREIT版自社株買いがなされました。投資口の購入を不動産投投資法人が行った上、償却を行うものです。2013年の法改正があり可能となり、今年の4月21日に運用規定を変更した後でした。この意味が今一つわからなかったのでメモです。僕は去年の公募増資時に少し買っています。

インベスコO、国内初のREIT版自社株買い
不動産投資信託(REIT)のインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人(3298)は12日、株式に相当する投資口の取得を実施すると発表した。発行済み口数の1.23%にあたる1万口、金額にして8億円を上限に実施する。REITによる自己投資口の取得は事業会社などによる自社株買いに相当し、国内では初の事例だ。投資口あたりの分配金引き上げや需給の改善につながる効果が見込まれる。取得期間は6月13日~7月20日。
(2017/6/13 日経QUICKニュース(NQN)から引用)

 

自己投資口購入の原資って何?

という疑問が湧きました。REITの場合、「収益の90%以上は分配金として投資家に配分される」ことによって法人税が免除されます。特別な理由がない限り、投資化に不利益がない様にその範囲で運用されます。株式会社にある「内部留保」に相当するものはほぼ存在しないのです。

原資はその期間内に発生した「売却益」と、毎年発生する「減価償却費」による手元資金によるものです。6期に発生した7億8千万円の売却益は分配金と962円/口として配分されており、実際は減価償却費が主な資金源となります。下記がインベスコの6期(2017年4月)までの手元資金の推移です。基本は「売却益」は税金の関係上その期に分配金として投資家に基本は還元されますし、減価償却費用は保有する資産の補修等にあてるべきものです。

下記を見ると14億8千700万の手元資金があります。インベスコOは約81.5万投資口ですので、1786円/口相当になります。大したことないですね。インベスコは1400億程度の不動産をオフィスを中心に所有しています。その規模から考えると「新たな不動産を購入」する資金にも少なすぎます。

 

 

何のために投資口の償却をするの?

REIT版自社株買いと言われますが、「自社株買い」と似た様な効果があるそうです。

インベスコは、2016年6月に公募増資しています。REITの場合は増資で不動産購入するので希薄化にはつながらないとは言え、その1年後に買い付け・償却をするというのも違和感も感じました。

 

背景には現在「不動産価格が高い水準にある」ということもあるそうです。次の物件購入の一部に充てても良いですが、今の不動産が高騰しているため、メリットが薄いと考えたと言えます。

 

また、インベスコは人気銘柄とは言えず、「投資口価格が低迷している」状態が続いていて、IPO時の初値108900円よりも価格から下回って水準で推移していました。JCRの格付けはA+を獲得していますが、資産規模が低い理由があるものの、A+の中ではNAV倍率はビリです。今回の施策によりNAVの改善に繋がりますが、1.23%程度です。アナウンスの際には「NAV改善への刺激効果」と言った表現もあり、実際に資産価値以下に評価される状況の改善を意識した施策です。

 

また、「何で分配金として払わないの?」と思いましたが、今回は手元資金の約55%の8億円をすると、分配金として払うのであれば965円/口になります。一期で払うと当然、最近購入した投資家がより有利になりますので不公平感が若干感じます。今回の施策だと全体の1.23%に相当するということなので、「今後は利益に対して分配金がずっと1.23%程度上がる」と考えられるので長期投資家にはこちらが良いと思いました。例えば、1000円/口の分配金を出す収益があれば、今後1012.3円/口になるということです。

 

実際の効果は?

前述の通り、理屈上投資口の価値は上限で1.23%程度上昇する訳です。発表以来投資口価格は7%上昇しています。

4月からREIT指数を指標とする「東証REIT指数上場投信(1343)」とのパフォーマンスとの比較です。最近はREIT自体が低迷気味ですので、好感持たれたとも言えるかもしれません。

 

まとめ

「REIT版の自社株買い」ということですが、REITは内部留保できる手元資金は限定的であり、その規模を大きく取ることはできない故に、財務上の効果も限定的です。ですが、投資家還元の施策の選択肢があるのは良いことで、大手では中々実行しづらい様な施策を「業界初」ということで実行したのは、僕としては投信法人自体にも好感が持てました。

 

 

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