スターアジア不動産投資法人が分配金利回りが8.11%と非常に高配当な銘柄としてランキングに登場しています。僕は公募増資時に申し込み外れ、その後分配金が増額発表あった後に良く調べずに少し買っています。今更ですが、高い利回りですが不人気で大手には見向きされないREITで、その理由を勉強してみました。
2017/6/23時点の分配金利回りランキング
母体が貧弱である。
母体は「スターアジアグループ」とあります。僕の最初のイメージは”シンガポールにでもあるデカい資産運用会社”なんて思いましたが、そんなことはなく、米国の投資家や運用機関向けに日本の不動産投資サービスを提供している日本企業です。2007年創業で従業員は社員は日米合わせて20数名程度の企業です。
三井不動産や三菱地所をバックに持つ様な投信法人は、大手がデベロッパーとして開発をし、その一部をREITとし投資資金を集める様なことはできますが、母体に不動産関係の事業を持たない中小リートは「良さそうな物件を購入して運用」ですから規模の拡大が難しくなります。それ故スターアジアは総合型として物流、住宅、オフィス等多種の中古物件を購入して運用しています。
母体が中小であるとガバナンスの問題も発生しやすくなります。スターアジアは「総資産の5%以内でメザニンローン債券への投資 」を謡っています。別にリターンの面では悪くないですが「リートに投資して、なんで債券投資するの?」と思えます。
出資者を見ても知らない名前が並んでいます。STAR ASIA Capitalが北米向けのファンドかと思います。
参考ですがJCR格付けがAA+である二銘柄の内の1つ優良REITの「日本ロジスティックファンド投資法人」の主な投資主は下記です。信託銀行がズラリですね。
規模が少さい。
時価総額は427億円です。稼働率等を考えると一定規模以上ある方が安定します。下記は時価総額と直近の分配利回りをプロットしたものですが、時価総額が高いREITは配当も低くなる傾向が見えます。スターアジアだけ、配当が高くて外れていますね。統計学的には何らかの理由がある「外れ値」ですね。
配当が高いのは売却益が凄すぎたらしい。後は普通。
スターアジア不動産投資法人は、NOIは5.28%で全体で52銘柄中31位になります。それで8.11%の利回りを出せる理由は売却益になります。
最近不動産の高騰もあり所有物件であった「オーク南麻布」32億7100万で2015年に購入したものが、2017年に50億2000万で関西電力系の企業に売却したそうです。凄いですね。これを投資口で単純に割ると4360円/口に相当します。2017年1月の分配金実績が3112円/口ですので、この売却益だけで全ポートフォリオの賃貸利益の一期分を大きく超えてしまいます。一期に分配するのは安定性の意味では良くないため、譲渡時期を敢えて2期に分割し、半分の売却を来期(2018年1月)への分配金としています。
【スターアジアの売却物件と売却益】
実際は全額分配される訳ではなく、非課税の範囲で内部留保金とし分配金を減額させていますが、2017年7月期に売却益は分配金を1210円押し上げています。2018年1月期予測では1300円程度が売却益分になります。この売却益を除くと分配金利回りは、現時点の103300円/口で、2017年7月期で3120円で6.06%、2018年1月期で2760円で5.32%になります。
その分を除けば、このクラスだと際立って高い訳ではないです。NOI利回りの実力値からしても大きく買いづらいと思えました。二期後に配当金が30%減る可能性が高いので、何か対策は必要で運営会社は2018年7月期向けに利益が出ている物件を売却することも考えているかもしれません。
僕は、この高い売却益は、投資口の買い・償却をするべきだったと思いました。半期1億程を内部留保に廻して正解だと思います。一時的に高い分配金を出すことは中期的には安定性を欠くことにになるので、選択肢にはあったはずですが何らかの理由で見送り、2期に分けて分配するとの判断があったのだと思います。
格付けがなく、上場してまだ1年。
スターアジアは2016年4月に上場したばかりで格付けも取れていません。まだ決算を2期しかこなしていませんので、その中での売却益の発生で分配金が安定していませんので格付けの取得はまだ難しいと思います。資産規模から見れば、それより低いスターツブロシード、Oneリート等は格付けが取れているので不可能ではないですが、運営会社は良い格付け取得のために再増資のチャンスを狙っているとは思いますので、投資家に分かりやすい形で進めるのが難しそうですね。
まとめ
利回りが良いですが、売却益が含まれた高さであり、それ以外の部分に対してはまだ運用して1年強ですので評価には早いと思います。1年で物件を2件で売却益を16億も取っている訳ですから、かなりアクティブな運用をするリートかもしれません。投信が入っていない割には個人投資家の割合も高いと思いますので値動きが市況に関わらず安定しない可能性もあり、値が乗ることがあれば市況全体での割高感や増資可能性を見た上で一度売却をして良いかと思いました。
—
以下以前の記事です。
REIT版自社株買いの記事です。実はスターアジアは自己投資口の購入・償却を運用規定で可能としています。現状はインベスコ・オフィス・ジェイリートとスターアジアだけです。
格付けと利回りについてです。スターアジアは格付けできる状況にも無いため、暫くは大きな投信/機関の資金の流入は期待ができません。