J-REIT投資信託が市場を崩壊させている様に見えるのだが.. 個別銘柄にチャンスかも。

(写真は左が投信法人みらい、右はフロンティア不動産投資法人が所有する品川シーサイド駅近くのビル)

REITの市況が悪いです。J-REIT指数は1620まで下落し分配金利回りは4.2%になりました。

一方で「月間REITの投資部門別売買状況」では投資信託が2か月連続で大きく売り越しています。

先週の記事で下落要因の3つを記載しましたが、「金融庁から「毎月分配型の投資信託」の改善指導があり、資金流入額の減」について少し掘り下げて、今後の市況を考えてみました。

REIT下落中。手元のポートフォリオは上昇してますけど..

投信の規模のおさらい。

投信信託協会が発表している資産額だと現状純資産額は約3兆6千億です。J-REITの時価総額が約11兆円ですのでこのデータだと「約1/3は投資信託が占めている」とのことになります。株式は東証一部の時価総額が約600兆の中での株式投信が32兆円ですから、他の市場と比較し、投信が市場の中で占める割合が高いです。つまり「投信の動向による市場への影響が大きいです」

上記金額はETFも含みます。J-REITの時価総額順に投信を見ると下記でETFは上位10位の内わずか1つです。毎月分配が6本です。計算はしませんが、ETFは純資産額でREIT投信全体の1割前後だと思われます。またトップの時価総額が2985億という大きさは1投信で市場の時価総額2.7%とはシビれますね。

毎月分配金型ってどんな状況?

外債を取り扱う投信では「金融庁の指導もあり分配金を減らしている」というニュースを読みましたが、J-REITの時価総額上位3位の投資信託を見ると現時点では分配金を減らしてはいませんでした。「分配金減額」➡「解約・流出」ではなく、「基準価格下落を嫌った投資家の解約」か「分配金を出すための解約」の様です。

分配金を出すために売却する。酷すぎる状況

投信は興味がないのですが、上記ダイワJ-REITで見て分配金利回りにどの程度無理が出ているのか、シミュレーションしてみます。

ダイワ J-REITオープン(毎月分配型)
現在価格 5622円
分配金 80円/月
REIT市場の分配金実力 約4.2%/年
信託報酬 約0.8%/年

これで考えると、5622円/口に対して80円の分配金を出していますが、REITの実際の分配金から期待できる利回りは80円の内の信託報酬も考慮すると約16円です。残りの64円/口は自己投資信託を売らないと分配できません。いわゆる「たこ足」です。 64/5622 =1.138% ですから、来月の分配金を出すために1.138%の自己資産を売却しなければなりません。当然、時価総額はその分目減りして投信価格は下落しています。これは酷い…..。下記がチャートです。

仮にこの分の買い付けが市場であり、このままREIT指数と利回りが4.2%を維持されるとすると、2年分配金を持続した場合、5年持続した場合のシミュレーションです。横軸は月数です。これで計算すると基準価格は24か月後に4756円(マイナス29%)、60ヵ月後に1363円(マイナス76%)という結果です。

現時点で年間14%近くも市場価格が上昇しなければげ基準価格を維持できないですが、仮に2年後の3997円に減った段階から基準価格を維持しようと考えれば、年間市場価格が24%上昇しなければいけません。基準価格が中期に渡って維持される可能性は0だと思います。

償還か減配か、どの道。。。。

これが市場の3割を占める投信の実態かと思うと想像以上に酷いです。いずれ「償還」か「減配」になりますが、2000億以上の投信が償還した場合の市場インパクトは大きいので難しいと思います。金融庁が責められるレベルです。一方で、分配金を減らせば解約に拍車がかかり資金流出に繋がります。どの道、市場にストレスがかかり続けることになると思います。

投信からは資金は減っていく。

分配金を出すための売却は続く

上記の様な毎月資産の1.138%の売却は酷い方だと思いますが、毎月分配型の割合を投信全体の80%、資産売却を0.5%が毎月必要と考えた場合には、月額の約150億円位になります。分配金の見直しがなければ、この割合は毎月少しづつ増えていくことになります。

毎月分配金型の営業が弱まった?

下記は今年のJ-REITの投信の増減額ですが「設定額」が4月から大きく減っています。6月は「流入-流出」が328億の流出です。これが売り圧力になります。金融庁の指導で「毎月分配型」の投信の積極的販売が難しくなった影響が出ています。

解約は増えている?

2017年6月の流出額は今年最大の1044億です。2016年には、これを超える解約はありましたのでトレンドとしては確定するには尚早かと思います。しかし「設定額 - 解約額」の流出328億は、僕が見た2010年以降のデータでは最悪値です。2016年は証券会社の営業で別のJ-REIT投信への「乗り換え組」が結構いたと推測しますが、金融庁の指導もあり、今回は乗り換えの営業を掛ける様な投信はJ-REIT内に存在しないのかもしれません。

下記、モーニングスターの6月の流出入データです。投信は約450億のマイナスとあるので、300億が投信の流出入、150億位がタコ足分なのかな?とイメージしました。4月から6月で毎月悪化していっていますのでこのトレンドが続くかは確認が必要かと思いました。下記を見ると投信内だと国際株式や国際債券に向かっています。

今後どうする?

投信の状況を考えると、今後の投信のシナリオは、

償還されれば市場で売られ大きく下落

分配金を減額すれば流出加速

分配金を維持してもジリジリ下げ続け流出の加速

で全くよいシナリオが見えません。現状ですと手出し無用な気がします。少し下がったと底と考えて大きな購入に走るのは危険だと思いました。市場のプレーヤーの構造変化が必要で、次のプレーヤーが海外投資家なのか銀行なのか、次の形を見えてからでないと投資は難しいと思いました。

僕はポートフォリオの中ではREIT資産はまだ増やす余地があるので、この下落はチャンスと捕らえることもできますが、一方で投信の投資口価格下落が続くと公募増資自体が減ったりして、J-REIT全体の成長へ影響が出ないか気になります。

「底が来るのはまだ先である」との構えを持ちつつ、分配利回り、NAV推移等を確認し満足できるものがあれば地味に拾っていきたいと思います。

今であれば、巡行時利回りで無格付け6.5%以上、A格付けであれば5.5%~6%前後、AAであれば5%以上の銘柄を目安にウォッチしていきたいと思います。

 

 

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