ドル値幅の記事を書いていて、取引所FXと店頭FXの値幅の差を認識しました。
2019年1月3日の取引所FX(くりっく365)の値幅は僅か2.145円で、安値は106.175円でした
始値 | 高値 | 安値 | 終値 |
106.795 | 108.32 | 106.175 | 107.66 |
下記、他の方のTweet引用ですが、
一方で店頭FXは最安値は「103.51~105.98」様々で大きな差が出ています。
ドル円フラッシュ・クラッシュについて主要FX会社の安値を見てみました
安値は103.51円から105.98円台まで会社によって大差が…。1分足のデータ抜けも多く取引できない会社、時間も多かったのかなーと。スプレッドもひどいことになってそうですね pic.twitter.com/BqJnUjx9SD
— 高城泰 (@takagifx) January 3, 2019
FXで退場しないためには「店頭FX」の仕組みとリスクを理解するのは大切だと思い記事を書いてみます。
極端に悪く言えば、「店頭FXは損失を個人投資家に押し付けるので、損しない仕組み」なのですよね。
取引所FX、店頭FXの違い
改めて、FXには「取引所FX」と「店頭FX」があります。
取引所FX
くりっく365と呼ばれるものです。個人からの発注を仲介し、インターバンク市場での為替取引を仲介しています。
店頭FX
個人とFX業者と相互に直接取引する業者で、レート等は店頭FX業者が決定します。
競馬で言えば、取引所はWINGで馬券を買うのに対して、店頭FXは仕組みとしては「ノミ(吞み)業者」の様なモノで業者の裁量で実際の取引をするかを決定します。無論、FXの場合は、店頭FXは法律に準拠し、金融庁の業者登録をした正式な為替取引業者です。
取引所FXは、店頭FXと比較しデメメリットばかり語られるけど。。。
「くりっく365」はドル円でもスプレッドは1ドル辺り3銭~と高く、1取引辺り50円の売買手数料を取るところが多いです。
店頭FXは、ドル円ならばスプレッドは0.3銭の所が多く、取引手数料もかかりません。比較すると店頭FXの方がメリットは明確で、
「くりっく365はお役所が作った仕組みで企業努力が足りない。あんなところ使う訳ない!」
と言った様な種のコメントを見ます。
「くりっく365」は仲介業者ですから、そもそも「店頭FX」とビジネスモデル自体が違うのです。
「くりっく365」は個人からの売買取引を、そのままインターバンク市場へ流しますので損こそせずとも利益も限定的です。
スプレッドも市場でマーケットメーカーによるマッチングにより値付けが決まります。
一方で、店頭FX業者は「個人との取引をいかにノ(吞)んで、利益を出すか?」を目的としています。
取引しやすい様に魅力的にデザインして取引量を増やして最終的に利益をあげます。
例えば「低スプレッド」や「最小取引単位」等、取引しやすい環境を提供する一方で、「スワップ」や「スプレッド」を調整して、収益へつなげます。
店頭FXの方が圧倒的に使い安いです。ですが、店頭FXの業者のロジックを理解しないで大きな損失を被っている人も多いと感じます。
正確性には欠けますが、「僕が店頭FX業者だったら、こーするよな?」位の見方で店頭FX業者がどう利益をあげているか書いています。
その1.低スプレッドを実現する「吞み」
極端で数字も小さくした例ですが、顧客の全体の総計ポジションが下記だったとします。
「買いポジションが1100万通貨」
「売りポジションが900万通貨」
店頭FXで全部吞んで何もヘッジせず、カバー取引をしないとすると、買いポジションが多いので円高に動いたらその分損を被ってしまいます。
ポジションを相殺し、単純に買いポジションから売りポジションを引いた200万通貨だけ、インターバンク市場に発注しておけば評価損なく成立します。
実際はこんな単純でないですが、ここでレートが変わらないとすると、取引手数料の収益はどうなりますか?
このケースでは、全体2000万通貨の内、10%に相当する200万通貨分だけ、インターバンク市場でカバーするものとします。
個人で売買合計のポジションが2000万分はスプレッドは0.3銭です。スプレッド分30円*2000万通貨=6000円のスプレッドの収益です。
くりっく365に従いスプレッドは3銭とします。200万通貨ですから、スプレッド分300円*200万通貨=6000円の手数料です。
売買ポジションの差だけ取引し、全体の発注量の10%以下に収まれば、スプレッドを1/10にしても損しないことになります。
そんな単純ではないですが、カバー取引を少なくすることによって収益を上げる芽が大きくなります。
その2.スワップで中抜き
取引所FXはインターバンク市場でのスワップがそのまま個人投資家に配布されます。
インターバンク市場での翌日物の金利レートに為替ベーシスから計算されます。
ですので、くりっく365は基本的に上記レートをベースに「買いスワップ = 売りスワップ」になります。
店頭FXは、そちらのスワップを横目にし、中抜きをして、スワップを決めます。
下記は典型的な例で、ある日の、くりっく365と、FXプライムbyGMOとのドル円のスワップ例です。
業者 | ドル円買いスワップ | ドル円スワップ |
くりっく365 | 84円/日 | 84円/日 |
店頭FX業者A | 74円/日 | -100円/日 |
これを図に表すと下記です。
インターバンクとの取引においては、プラスのスワップは中抜きし、マイナスのスワップはユーザへ被せます。
その上、業者の裁量でカバー取引をしていないポジションは、ユーザ通しにスワップ負担をしてもらい損が出ない様にします。
下記が図になりますが、この例だと儲かるポイントしかないですね。
マーケティングツールに使われるスワップ
上記図であれば、業者はポジションが増えればどんどん儲かるだけです。
カバー取引のポジション量は、一定でないので、プラス・マイナスのスワップとポジションから、都度見直しをします。
店頭FX業者のスワップが安定しない業者はセコい業者かもしれません。
一方で、FX店頭業者は、差別化の材料、マーケティングに使っています。一定の持ち出しをしているところもあります。
例えば、DMM FXは「くりっく365」と同じ形式として、買い、売りのスワップを同じ金額にしています。
(DMM FXのサイトから転用)
これだと、顧客のポジションによってはスワップの持ち出しが発生します。
なので、損が多くなれば、売買ポジションに合わせて、ユーザへのスワップの金額を調整することがあります。
理屈だと、全体で見て売りポジションの方が多ければ、スワップの絶対値を上げ、買いポジションが多ければスワップの絶対値を下げればOKになります。
DMMはスプレッドリスクは小さくない業者ですが、サービスの運用に対してはしっかりしたポリシーを感じます。
スワップキャンペーンは客寄せ
よく「スワップを高く設定し集客し、集まったところでスワップの金額を下げる」ということがあります。
特に高金利通貨に関して、くりっく365より高いプラスのスワップを一時的に提示し、集客しているところも見えます。
その場合は、その高スワップは続く可能性は薄いことは理解できると思います。
この辺りを理解せずに釣られていくと、そのまま取引を継続し、高いスプレッドを食らってロスカット退場ということに繋がります。
こちらに各業者のスワップを出しているサイトがありました。
スワップを見ながら業者の戦略を考察してみるのも面白いかもしれません。
その3.損しない為の値付け・スプレッド
FX業者で、よく聞くのが「ロスカット狩り」です。
よく「狙って狩っている」なんて話もありますが、アルゴリズムを組めば自然とそうなると思われます。
店頭FX業者は吞んでいる分がありますので、急激な価格変化の際には、カバー取引のポジションの調整が追い付かないケースが発生します。
単純に、
「顧客が持っているポジションの評価損益」 ≦「カバー取引のポジションの損益」
になればよいだけです。
例えば上記の例で、カバー取引で200万通貨をしている時に暴落して円高になります。
顧客はどんどん損切をしても、カバー取引が追い付かず損失が発生し始めます。
「顧客が持っているポジションの評価損益(どんどんクローズ!)」 > 「カバー取引のポジション損益(追っつかず損💦」
となります。
そうすると、スプレッドを広げて対応します。
買いたい人(売りの利確、新規の買い)には高い値でオファー
売りたい人(買いの損切、新規の売り)には安い値オファー
スプレッドをどんどん広げ、現状のカバー取引との評価損益を一致させる様に動きます。
店頭FX業者が、例えば円高の急落についていけないとスプレッドが広がっていきます。
スプレッドが広がり、しかもロスカットが大量に発生すると、そこでカバー取引との利鞘が業者に入った結果、
「自分の顧客が持っているポジションの評価損益」
≦ 「店頭FXとしてインターバンク市場で所有しているポジションの損益」
が成立すればスプレッドを縮めていきます。
店頭FX業者は、デザイン次第で全く損をしない仕組みを構築することが可能です。
しかも、日本の場合には追証が可能ですから、店頭FX業者は値付けに難しいことは考えずに「損が出ない値付」を出し続けることが可能です。
店頭FXでは個人投機家は弱者
FXではよく「コツコツ・ドカーン」に表現され、小さく利益を確保してもどこかで大きく損失をすると思うものです。
そうだと思います。店頭FX業者は個人投機家が取引さえすれば、中抜きをし続け、損失が発生すれば個人に押し付ける仕組みができている訳です。
FXで勝てる可能性を上げるには、店頭FX業者の意図を理解した上で、少し引いて他の方より、一段低いリスクで取引・運用するのが生き残るコツだと思います。残念ながら、店頭FXの低いスプレッドや、口座開設キャンペーン、スワップキャンペーン等は、誰かが店頭FX業者への利益貢献している上で成り立っているのです。