REITの分配金利回りから見る銘柄選定について(格付けとの関係)

(写真は星野リゾート投資法人が所有する”星のや軽井沢”)

REITで個別銘柄を購 入する時に疑問に思ったのが「分配金」の差です。NOI利回りやNAVを見ていても分配利回りとの相関が高くなく、疑問に思ったところに対して少し仮説検証してみました。

 

利回りのトップは6-8%

分配金が高いというのは、人気のない銘柄であるとも言えます。2年位前と比較すれば幅が広がった気がしますし、利回りも全体としては上昇しています。REITですが人気銘柄は最近まで3%を下回る水準のものもありました。

そもそも機関ばかりが投資しているのでは?

この低金利時代にこの利回りで放置されるので、個人投資家が主ではなく、不動産投資信託で株式と異なった「業界の常識」みたいのがありそうな気がしました。個人投資家の割合を調べたところ、REITの投資主情報調査結果(2017年2月)で口数の割合が出ていました。口数による割合なので銘柄の金額が加味されていませんが、これ見ると個人は10%程度で後は法人です。外国法人の割合が株式と比べて低いです。しかし、信託銀行/都銀・地銀の持ち分の48.4%の内、「全体の35.8%相当が投資信託」「全体の0.9%が年金信託」でした。

投資信託によるREIT購入が結構大きい

投資信託はほぼ個人投資家ですから35%とは大きい印象です。モーニングスターのJ-REITの時価総額TOP3は下記でした。この三つで時価総額の0.8%(投資信託の総額の2.3%程度)をサンプルとして見ると、インデックスではなくアクティブ運用が多いです。目録書等を見ると銘柄選定/割合の決定は「金融機関の研究所が収益予想」➡「運用会社が財務リスクチェック」とあり、結局、財務リスクチェック等は格付け依存する形となっています。

(それにしても、これらの投資信託は見れば見るほど酷いですね。目録書等を見ていたら眩暈がしてきました。。。また似た様な商品ばかりで意味がわかりません。金融庁に頑張って欲しいものです。)

J-REIT・リサーチ・オープン(毎月決算型)
しんきん Jリートオープン(毎月決算型)
ダイワ J-REITオープン(毎月分配型)

 

格付けに大きく依存するのでは?

個人が10%程度であることや、全体の35%を占める投資信託がアクティブ運用が多いことから、ファンドマネージャは、失敗しても言い訳が効く様な「格付け依存」になると思えました。格付けは収益性や財務の安全性で評価されるものですから頼りにはなりますし、機関が運用する時にインデックス以外で「格付け無」はなかなか投資方針に合わないものです。下記がJCRの格付けを取得している銘柄の格付け毎の利回り平均になります。

銘柄数が少ないですが、無格付(11銘柄)5.75%、AA+(2銘柄)の3.32%の分配金周りを見れば明確です。この差分が僕は若干大きい様に感じた様です。プロの人から見れば当たり前なんだろうと思います。

A+(4.92%)とAA-(3.94%)の間に平均利回りは1%の差は「AA相当」基準としている日銀の影響もある様に見えます。機関もフォローしているということでしょうが、歪んでいますね。

 

無格付けREIT

利回りのTOP5は全て無格付けです。大きな割合を持つ機関の購入が少ない訳ですから、インデックス以外では放置され、REIT市況に資金が流入しても上昇の恩恵にはあずかりにくいことになります。格付けは申請しなければ取得できないので、無格付の中にも今後格付けを取得していく銘柄があるかと思います。

無格付けの理由はいろいろありますが、最近上場したものが多く、また時価総額も低くポートフォリオが脆弱なものが多いです。REITのIPOは最近公募価格割れが続いています。三井不動産ロジスティックパークの様な大手後ろ盾と格付け取得が約束されたものは価格も上昇しました。一方、弱小REITでは現在は、大きな資金を集めてポートフォリオ強化することも難しい状況です。

 

無格付けREITとか分配金に惹かれて買うの?

無格付けREITを購入できるか? となれば市況とIR情報を見て判断するしかありません。逆に多くの機関投資家の投資基準に入っていない銘柄から、キャピタル狙いであれば良い利回りで長い期間恩恵を受けることができる可能性があります。

 

書いていて、日銀影響度合いや、格付け-無格付けのボーダーラインと格付け後のトレンド等、疑問がたくさん湧きました。「無格付けだと何が悪い?」という気分が残っているので続きは別で書きたいと思います。

 

おまけ

REITですが35%が投資信託とかヤバいです。年金生活の足しにと毎月分配型の投資信託を購入している人は、マネーリテラシーは低い人も多く、今後10年を見ればこの資金が減っていく可能性が高いです。日銀の年900億円(時価総額の0.8%)のペースで購入の出口議論が始まれば下落しますし、不動産価格も高騰し続けていて、REIT投資のいい材料が少ないですね。

 

こちら、少しデータが古くなりましたので、各格付け毎の利回り平均、時価総額合計のリアルタイム更新データです。

J-REITの格付け毎の利回りグラフ(リアルタイム更新版)

こちらNOI利回りから見た分配金の関係の記事です。

REITのNOI利回りと分配金の関係の謎。実不動産との違いについて

 

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